ワニの夢 Dream of a crocodile
マドレーヌは小学生くらいの女の子でした。
夏休みのある日、父と母と三人で川に遊びに出かけました。
両親がどこかに連れて行ってくれることはあまりなかったので、マドレーヌは久しぶりのお出かけにとても幸せな気持ちでした。
父は川沿いの道路脇に車を停めて、「遊んでおいで」と言いました。
マドレーヌは車の中から川に目をやりました。
その濁った川には大きなワニが沢山いて、車の音を聞きつけて岸に向かって近づいてきていました。
でもマドレーヌはせっかく連れてきてくれた父と母をがっかりさせたくありませんでした。
車のドアを開けて外に飛び出すと川に向かって駆け出しました。
途中一度振り返って、両親に楽しそうに笑って見せました。
マドレーヌは川に飛び込みました。
水の中で目を開けると1匹のワニが泳いでくるのが見えました。
マドレーヌは怖くありませんでした。
泳いでくるワニを見つめていると、そのワニと目が合いました。
マドレーヌの頭の中に、ある光景が流れ込んできました。
ヨーロッパのおしゃれな街の一角にあるカフェの前できれいな女性が二人並んでいる光景でした。
「これはあなたの夢なの?」
マドレーヌは心の中でワニに尋ねました。